危険物倉庫とは? 保管するための注意点や適切な保管方法について解説
危険物は消防法で定義され、管理に厳しい条件が指定されています。そのため、一定数以上の危険物を貯蔵するには、危険物倉庫として許可された貯蔵所が必要です。また危険物倉庫を建築した後も正しい運営や点検体制が必要となり、それらも消防法で定められています。火災や爆発が起こらないようリスクを最大限に減らし、安全に運営できると認められた建築物が危険物倉庫なのです。
本記事では、危険物倉庫を建設する条件や、保管するためにどのような点に注意しなければならないのか、また適切な保管方法についてご紹介します。ぜひ建築する際の参考にしてみてください。
Contents
危険物倉庫は危険物の屋内取扱所の総称
消防法にて定められた指定数量以上となる場合、危険物の製造所・貯蔵所・取扱所の建設や運営には許可が必要です。貯蔵所以外の場所で貯蔵したり、製造所・貯蔵所・取扱所以外の場所で危険物を取り扱ったりしてはならないと定められています。そのため、ある程度まとまった量の危険物を屋内で貯蔵するには、所定の手続きを踏んで許可を得た危険物倉庫が必要になります。
※参照:消防法第10条第1項(2021-09-10)
危険物倉庫を作って使用するためには、消防法にて定められた基準を満たさなければなりません。例外として10日間限定で仮貯蔵や仮取扱いができる場合もありますが、別途管轄の消防署に許可を得る必要があるのです。
消防法にて定められた基準には、設備そのものや取り扱い体制、保安体制などが含まれます。これらの基準をクリアした上で管轄の消防署と協議を行い、設置許可を得ることが必要です。許可の申請は管轄の消防署が提供するフォーマットに沿って書類を完成させ、提出することで完了します。フォーマットは管轄の消防署ホームページからダウンロード可能です。
もし、申請する書類や準備すべき内容が不明確な場合は直接問い合わせましょう。手続きには時間や手間がかかるので、行政書士に依頼して申請を代行してもらうという方法もあります。
危険物の定義
危険物とはガソリンや灯油など、危険を引き起こす性質を持った物質の総称です。
消防法で定められており、
- 火災発生の危険性が大きいもの
- 火災拡大の危険性が大きいもの
- 消火の困難性が高いもの
と定義されています。
参考:総務省消防庁 法令(2021-09-10)
6つの種類に分類されており、性質によって取り扱いの注意点も異なります。
危険物の分類
消防法で定められている危険物の性質と危険物の例は、以下のとおりです。
種別 | 性質 | 例 |
第一類 | 酸化性固体。可燃物と混ぜるとその可燃物を酸化させる。可燃物と混合することで発熱、発火、爆発などを起こさせる。 | 塩素酸塩類、過塩素酸塩類、無機過酸化物、亜塩素酸塩類、臭素酸塩類、硝酸塩類、よう素酸塩類、過マンガン酸塩類、重クロム酸塩類 など |
第二類 | 可燃性固体。火が付きやすく燃焼しやすい。消化が困難である。
|
硫化りん、赤りん、硫黄、鉄粉、金属粉、マグネシウム など |
第三類 | 自然発火性物質及び禁水性物質。空気や水に触れると発火や可燃性ガスを発生する固体や液体。 | カリウム、ナトリウム、アルキルアルミニウム、アルキルリチウム、黄りん、アルカリ金属など |
第四類 | 引火性液体。引火性のある液体で引火点250度未満のもの。引火や爆発を起こす。 | 特殊引火物、第一石油類、アルコール類、第二石油類、第三石油類、第四石油類、動植物油類 |
第五類 | 自己反応性物質。可燃物と酸素供給体を含んでおり、低い温度でも熱を発生、または爆発的のような反応が進む個体や液体。 | 有機過酸化物、硝酸エステル類、ニトロ化合物、ニトロソ化合物 など |
第六類 | 酸化性液体。他の可燃物の燃焼を促進する液体。 | 過塩素酸、過酸化水素、硝酸 など |
これらの中では第四類がもっとも危険度が高く、危険物倉庫で気を付けるべき基準として捉えられています。
その他危険物とは別に政令で定められているものが、指定可燃物です。火災が発生した場合に燃え広がりやすく消火が難しい物品として、貯蔵、取り扱いの基準が市町村条例によって定められます。
危険度合いの基準となる指定数量
指定数量は、危険物の危険度合いを測る数字です。消防法第9条3項にて「危険物についてその危険性を勘案して政令で定める数量」と定義されており、危険物の種類ごとに、アルコール類であれば400L、鉄粉であれば500kgなどとそれぞれの危険性を考慮して定められています。
参考:e-eov法令検索(2021-09-10)
指定数量に対して、実際にどのくらいの量を取り扱うのかは指定数量の倍数で表現可能です。危険物の実際の数量を指定数量で割り算し、指定数量の何倍なのかを表現します。
試しに計算してみましょう。実際の数量と指定数量が同じであれば1倍となり、実際の数量の半分が指定数量であれば2倍となります。指定数量倍数が1以上の場合は消防法が適用され、危険物倉庫としての申請が必要です。
なお申請の際、管轄の消防署へ支払う申請手数料は、指定数量の規模によって変わります。危険物倉庫設置の際は2万円~9万2千円の場合が多いです。申請後には完成検査も必要ですが、そちらは1万円~4万6千円が目安になります。
また指定数量よりも少ない量の危険物を取り扱う場合や、消火が難しい物として取り扱いが制限されている指定可燃物を取り扱いたい場合も、注意が必要です。危険物倉庫としての申請が不要だからといって、自由に取り扱って良いわけではありません。この場合、危険物倉庫の位置や構造、設備の基準は、市町村条例が定めるものに従います。市町村と協議を行って基準を満たした場合のみ、危険物の貯蔵や取り扱いができるのです。
危険物倉庫には管理責任者が必要
指定数量以上の危険物を貯蔵したり取り扱ったりする危険物倉庫では、危険物の管理責任者を設定しなければなりません。また管理者は国家資格である危険物取扱者を取得している必要があります。
危険物取扱者の種類は甲種、乙種、丙種の3段階です。取扱うことができる危険物の種類や権限に違いがあります。甲種危険物取扱者は、大学などで専門的な知識を得ている人や、乙種の資格を持っている人、実務経験がある人など受験資格に制限がある上級資格です。
どの段階の危険物取扱者も、管理責任者となった場合は、危険物倉庫から危険性を除去するように努めるよう求められます。
危険物保管時の注意点
危険物倉庫で取り扱う危険物はその名のとおり、貯蔵や取り扱いに危険が伴う物質です。第一類と第二類をそばに近づけないよう注意しなければ爆発が起こったり、第四類を不注意で床にこぼすと引火したりします。保管時には非常に多くの注意点があり、リスクを事前に下げるために定められているのが以下のような基準です。
- 保安距離、保有空地が保たれている
- 軒高が6メートル未満の平屋建である
- 床面積が1000平米以下である
- 屋根材、梁には軽量な金属板などの不燃材料を使っている
- 鉄筋コンクリート造りなど耐火構造の壁、柱、床
- 室内には天井を設けられていない
- 網入りガラスの窓
- 火気厳禁である
- 室温が上がりすぎない
- 危険物の取扱いに必要な明るさ・採光を確保する
学校や病院など人が集まる場所は保安対象物とされており、危険物倉庫は保安対象物から一定の距離が離れた場所にしか設置できません。定められている一定の距離を保安距離と呼びます。危険物倉庫の近隣は爆発や火災のリスクが高いため、貯蔵量や倉庫の構造に応じて保有空地の確保も必要です。
規模が大きい危険物倉庫は、万が一火災などが起きてしまうと被害規模も大きくなります。倒壊による2次被害発生や、迅速な消化活動ができず大規模火災になってしまうことがないよう、あらかじめリスクを減らさなければなりません。そのため軒高や床面など倉庫の大きさにして制限があります。
また危険物が発火して火災が発生した際に、建物へ燃え広がらないようにする工夫も必要です。そのため不燃材料の使用や、耐火構造であることが条件となっています。万が一爆発が起きた際を考えて、爆風が発生することにも備えなければなりません。天井を設けてはならなかったり、網入りガラスの窓が必要だったりするのはそのためです。
もちろん危険を未然に防ぐのも重要なため、倉庫内の火気や室温も制限の対象になっています。危険物倉庫の採光にも考慮して、停電時などでも人手による作業や点検ができる構造にすることも必要です。
適切に保管するために
貯蔵する危険物の種類や量によっては、火災や爆発などの防止のために必ず設置しなければならない設備などが決められています。指定されている基準は以下のとおりです。
- 危険物取扱の標識、掲示板の掲示
- 避雷設備
- 蒸気排出設備
- 温度センサーなど室温を知らせる設備
危険物倉庫には、施設名の標識や取り扱い内容を記載した掲示板を掲示しておくことが義務付けられています。取り扱う危険物によって表示すべき内容や、色、文字のサイズなどもすべて決められており、見えやすい所に掲示しなければなりません。
もしも雷が落ちた時には、引火性のある危険物などを貯蔵していた場合2次被害が大きくなるため、指定数量に対して取り扱う量が10倍以上となる施設では避雷設備を設置する義務があります。また、温度の上昇による発火を防ぐために、引火点が70度未満の危険物の場合は蒸気排出設備が必要です。
その他、機械の不具合で万が一室内温度が上がってしまわないよう、温度センサーなどと連動して室内の温度が上昇してもすぐ分かるようにします。
まとめ
危険物倉庫とは、消防法上の危険物を保管する倉庫のことで、建設基準に則り建設しなければいけません。ご相談は電話またはメールにて承っ ております。危険物倉庫や一般的な倉庫をご希望の際は、ぜひ、お気軽にお問い合わせください。