医療用陰圧テントについて 機能・普通のテントとの違いとは?

新型コロナウイルス感染症の流行により、患者管理のために陰圧室の需要が増加しました。

しかし厚生労働省の調査によると、平成29年時点での陰圧室(病床数)は6,036床、陰圧室を設けている施設数は647施設*でした。陰圧室は多いとはいえず、そもそも陰圧室を設置していない中小規模の病院も珍しくありません。

医療用陰圧テントは、屋外に建てて陰圧室として利用できる医療用テントです。陰圧室がないケースや病床数が足りないケースでも、すぐに陰圧室を用意できます。

本記事では、医療用陰圧テントの機能・特徴を説明します。医療用に使用する場合だけでなく、医療用以外の使い方についてもご紹介しますので、災害避難場所や仮設教室としての利用を検討している場合にもご活用ください。

*出典:厚生労働省|医療施設調査 / 平成29年医療施設(静態・動態)調査 上巻

医療用陰圧テントとは

医療用陰圧テントとは、テント内部の空気が外に漏れない仕組みの医療用テントのことを指します。陰圧とは、テント内部の圧力が外部よりも低い状態のことです。空気は圧力が高いほうから低いほうへと流れていくため、陰圧テント内の空気が外部に漏れることはありません。また、一般的に医療用陰圧テントは屋外に設置するため、病院内に十分なスペースがない場合でも対応できます。

一般的な医療用テントとの違いや陰圧の仕組みを詳しく説明します。

一般的な医療用テントとの違い

一般的な医療用テントと医療用陰圧テントの違いは、陰圧システムの有無です。一般的な医療用テントに陰圧システムはありませんが、応急的な隔離や屋外での受付業務を行う場所として利用されます。

医療用陰圧テントは屋内が陰圧のため、感染が確定した人の治療や感染が疑わしい人の隔離にも使用できます。

陰圧にする仕組み

医療用陰圧テントの陰圧システムは、屋内の空気圧を屋外よりも低く設定することで、屋内を陰圧に保ちます。空気圧の高いほうから、低いほうへ移動する空気の性質を利用した仕組みです。

陰圧システムにより屋内の病原体が屋外へ漏れにくくし、感染拡大を防ぎます。

医療用陰圧テントの機能・特徴

ここからは、医療用陰圧テントの機能と特徴を説明します。

ウイルスなどの感染拡大を防ぐ

医療用陰圧テントは、ウイルスなどの病原体による感染拡大を防ぎます。

病原体のなかには、微粒子となって空気を介して感染するリスクを伴うものもあります。陰圧で屋内の空気が漏もれにくいため、ウイルスなどの病原体が屋外に拡散するリスクを軽減できる仕組みです。

より効果的に感染拡大を防止するには、CDC(アメリカ疾病管理予防センター)の基準に合致していることが条件です。CDCの基準をもとに、日本感染症学会が推奨している隔離用陰圧室の施設基準を以下に示します。

  • 吸気側のダクトに高性能フィルターまたは逆流防止ダンパを設ける
  • 排気用ダクトにはHEPAフィルターを付ける(第一類感染症を取り扱う場合)
  • 12回/時間以上の室内換気を行う
  • 2回/時間以上の外気による換気を行う

*引用:一般社団法人 日本感染症学会|院内感染対策講習会Q&A|Q44隔離用の陰圧室,陽圧室に関する施設基準について教えてください.

テント内にある感染源の拡散を防ぐ

医療用陰圧テントには、感染源となる人や物と、ほかの患者や医療従事者が接触する機会を減少させることで、ウイルスの拡散リスクを軽減します。

感染の疑われる患者が病院内で受付をして受診した場合、受付や待合室、診察室の消毒が必要です。また受付や案内をした医療従事者、待合室で同席した患者への感染リスクもあります。医療用陰圧テントを使用すれば、感染の疑われる患者が触れた物や接触した人などの感染源が限られるため、感染管理がしやすくなります。また消毒範囲も狭いため、コストも削減できるでしょう。

緊急時に必要な場所へ設置できる

医療用陰圧テントは緊急時でも必要な場所へ設置でき、工期も短いことが特徴的です。

病院内に陰圧室を作る場合は、ダクトやフィルターの設置など大がかりな工事をしなくてはなりません。既存の建築物を改修するため、設置に時間がかかってしまうことが想定されます。

医療用陰圧テントは軽量鉄骨とテント用シートで作ったテントにダクトやフィルターを取りつけるため、従来工法よりも短期間で設置できます。設置場所もある程度自由に対応できるので、一般的な建築物を建てられない土地での利用も可能です。

医療用陰圧テントが選ばれるケース

医療用陰圧テントが選ばれるのは、非常時の仮設医療施設や医療従事者の休憩室として活用できるためです。ここでは、医療用陰圧テントを活用できるケースを紹介します。

非常時の仮設医療施設として活用

医療用陰圧テントは、非常時の仮設医療施設として利用できます。

厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部は、帰国者・接触者外来の増加に伴い、プレハブや大型テントなど仮設医療施設の設置を支援しています。*

検査や診察、感染者の治療のために医療用陰圧テントを利用することで、病室を増設する必要はなく、一時的に陰圧室を増やせることがメリットです。

*出典:厚生労働省|臨時の医療施設等に関する参考資料

*出典:厚生労働省|「帰国者・接触者外来の増加策及び対応能力向上策について」

医療従事者の休憩室として活用

医療用陰圧テントは、医療従事者の休憩室としても活用できます。

たとえば、感染症対策に従事している医療従事者と一般業務を行っている医療従事者を分けたいときなどに利用すれば、医療従事者間での感染拡大を防止できます。また、ワクチン接種のために、支援に来ている医療従事者のための休憩場所としても役立つでしょう。

医療用以外の用途で使用するケース

実は医療用陰圧テントは、医療用以外の用途でも使用できます。たとえば、以下のケースです。

  • 災害時の避難場所
  • 仮設教室

それぞれのケースで、医療用陰圧テントが役立つ理由を説明します。

災害時などの避難場所として

災害が起こった場合、避難によって感染症が発生するリスクが懸念されます。断水による手指の流水洗浄ができなくなることや密集環境が、感染症の発生しやすい主な理由です。

医療用陰圧テントを用いて体調の優れない人を適切に隔離することで、感染症の発生や拡大予防につながります。

教育の場として

医療用陰圧テントは、教育現場でも活躍します。学校には多くの生徒が集まり、教室内で密集して生活します。集団感染が起こりやすい教育現場では、医療用陰圧テントを使用することも1つの感染対策です。体調の優れない生徒を安全に隔離し、ほかの生徒への感染拡大リスクを軽減できます。

医療用陰圧テントの選び方

設備やサイズ、設営方法などを基準に医療用陰圧テントを選ぶとよいでしょう。医療用陰圧テントを選ぶ際に、確認したい3つのポイントを解説します。

冷暖房設備

医療用陰圧テントに、冷暖房設備が取りつけられるかを確認しましょう。

特に夏季に使用するときは、テント内が高温になって熱中症を引き起こすリスクが懸念されます。防護服を着用しての診察や検査では、テント内の温度は医療従事者の体調不良の原因にもなります。

冷暖房設備が取りつけられる医療用陰圧テントを選択すれば、季節を問わず利用できるでしょう。

サイズ

医療用陰圧テントを選ぶときは、テントのサイズにも注目しましょう。

簡易な診察や検査をする場合には大型テントは不要ですが、患者隔離のためにベッドを置く際は十分な広さが必要です。医療従事者が作業しやすいように、ベッドの間隔も考慮してサイズを検討しましょう。

設営の簡便さ

設営の簡便さも、医療用陰圧テントの選び方で重要なポイントです。

緊急時、迅速に設営できるかを考慮し、自分たちで設置するタイプや工期の短い医療用陰圧テントを選びましょう。医療用陰圧テントは緊急時の一時的な施設のため、撤去も簡単なものを選ぶのがおすすめです。

無菌陰圧テントのことならOSテックへ

医療用陰圧テントは屋内が陰圧のため、病原体がテント外に漏れにくい仕組みの医療用テントです。以下のような特徴があります。

  • 感染拡大を防止できる
  • 感染源の拡散を防止する
  • 緊急時に必要な場所へ迅速に設置できる

陰圧室が足りない場合も病室を増設する必要なく、短い工期で陰圧室を設置できます。

弊社では、日本エアーテック社製の排気ユニットを設置した「無菌陰圧テントルーム」を用意しています。排気は陰圧室に利用されているHEPAフィルターを通して行われるため、外部に病原体が放出されるリスクを減らせる仕組みです。

医療用としてだけでなく、教育現場や災害時の避難場所としても活用できます。陰圧室の設置を検討されている方はぜひ一度ご相談ください。

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