テント倉庫の防火対策!消防法や防火地域への設置についてなど解説
テント倉庫は骨組みにシートを張るだけで完成する、短い工期かつ低予算で建てられる建築物です。法律上は建物のため建築基準法や消防法など、各種法律を遵守して設置する必要があります。消防法ではテント倉庫の規模によって、備えるべき消防設備も異なります。もしもの火災の際に倉庫内の従業員や物品を守るためには、消防法に則ってテント倉庫を設置しなくてはなりません。
Contents
本コラムでは、防火地域への設置の規定や備えるべき消防設備などテント倉庫の防火対策について解説します。テント倉庫の設置を検討している方は使用する際の注意点として、現在テント倉庫を利用している方は現状の消防設備が適切なものかを確認するために、ぜひご覧ください。
テント倉庫の建築確認申請に関しては以下のページで紹介しております。合わせて参考にしてください。
消防法とは?
消防法とは火災を予防するだけではなく、万が一発生した際に被害を最小限に留めるための法律です。火災の予防・警戒、消防設備、消火活動、救急業務など、人命や財産を火災から守るために様々な規定がなされています。住宅や商業ビルのような建物は消防法に則って建てられています。
消防法で規定されているものには、防火管理者の選任や避難訓練、消防設備の点検、危険物の取り扱いなどが挙げられます。具体的には、火災による被害を最小限に留めて人命や財産を守るための消防設備の設置・点検や、防火管理者が消防計画に基づいて、消火・通報・避難の訓練を実施することが義務付けられています。もしも点検を怠ったり、避難経路が確保されていなかったりといった消防法違反が原因で火災による死傷者が出れば、法人の場合最高1億円の罰金を科せられます。テント倉庫も建築物なので、消防法を守らなくてはなりません。
テント倉庫の消防用設備
建築内で万が一火災が発生した際に被害を拡大させないため、消防用設備を設置しておく必要があります。これは消防法によって、建物の規模や用途によって設置が義務づけられています。
消防用設備は以下の3種類に分けられます。
- 警報設備
警報設備は火災をいち早く発見して知らせる設備です。火災報知器やガス漏れ警報機、非常放送の設備などが当てはまります。
- 避難設備
避難設備は火災が実際に発生したときに、避難するための器具や設備を指します。具体的には、非常用照明器具などが該当します。2階以上の建築物の場合は避難はしごや救助袋も避難設備に当てはまります。
- 消火設備
消火設備はスプリンクラーや消火栓といった、火災を消火して延焼を防ぐのに必要な設備です。
いずれの消防設備も火災時の安全確保のために重要な設備です。
テント倉庫は延べ床面積によって必要な消防用設備が異なる
テント倉庫は消防法により、消防設備を設置することが義務づけられています。これは以下のように、延べ床面積によって必要な消防用設備が異なり、面積が広くなるほど多くの設備が必要となります。
床面積別消防用装備
- 500㎡未満=消火器
- 500㎡以上=消火器+火災報知器
- 700㎡以上=消火器+火災報知器+屋内消火栓
屋内消火栓は、箱型の設備にホースが入っている初期消火を目的とした設備です。非常警報設備が一体となっているものが多く、「1号消火栓」と「2号消火栓」の2パターンあります。「1号消火栓」はホースを全て引き出して使用するタイプで、2人以上で訓練が必要です。対して「2号消火栓」は1号消火栓よりも放水量を少なくし、1人でも操作できる設備です。ただし「2号消火栓」は放水性能が劣るため、工場や倉庫には設置できません。
テント倉庫に消火器を設置する際の注意点
テント倉庫へ消防用設備を設置する際は、消防法に基づいておく必要があります。特に消火器は設置する場所や個数に明確な決まりがあります。
消火器の設置基準
消火器の設置基準は、以下のように定められています。
-
防火対象物の各部分から消火器の距離まで、歩行距離20m以内になるように設置しなくてはならない
-
通行や避難に支障がなく、緊急時にすぐ持ち出せる場所へ設置しなくてはならない
ただし指定可燃物(綿花類・木材・糸・わら・再生資源燃料など)を貯蔵している場合や、電気設備がある場所、多量の火気使用場所などの場合は、特に火災の危険性が高いため上記項目に加えて通常よりも多く消火器を設置しなくてはなりません。例えば、指定可燃物を貯蔵・取り扱いしている施設では、指定数量の50倍の消火器を設置するよう定められています。
消火器の設置数の算出方法
消火器には種類ごとに、能力単位が決められています。例えば粉末3型消火器であれば1、粉末6型消火器であれば2が能力単位です。
能力単位を下記のような式で算出すれば、必要な消火器の本数が求められます。
【延べ面積 ÷ 1単位/m² = 能力単位】
1単位/m²は、建物の種類や構造によって決められています。倉庫の場合であれば、耐火構造の場合「200㎡/1単位」です。非耐火構造の場合は、「100㎡/1単位」です。
例えば、延べ床面積が800㎡で、耐火構造であるテント倉庫の場合「800㎡ ÷ 200m² =4(能力単位)」となります。このテント倉庫の場合は能力単位が4を満たす消火器が必要なので、先ほど例にした粉末3型消火器であれば4つ、粉末6型消火器であれば2つ必要ということになります。施設の種類や面積によって、設置するべき消火器の必要本数は異なります。算出された能力単位に応じて、必要な数・種類の消火器を揃えましょう。
定期的な点検と報告が必須
消防設備は万が一の際に作動しなくては意味がありません。定期的に点検を行い、その結果を報告することで、いつでも使用できるように備える必要があります。点検には6ヶ月に1回行う「機器点検」と、1年に1回行う「総合点検」があります。どちらの点検も、基本的には消防設備士または消防設備点検の資格者が行うのが決まりです。
機器点検は目視などによる簡易的な点検です。一方、総合点検は実際に消防設備を作動させ、問題なく作動するかどうか細かくチェックします。総合点検の結果は、所轄の消防長または消防署長へ、定期的に報告を行う必要があります。倉庫の場合は非特定防火対象物に該当する場合が多いため、3年に1回報告する義務があります(特定防火対象物の場合は1年に1回)。もし点検報告を怠ると、点検報告義務違反で、30万円以下の罰金または拘留が科せられます。
テント倉庫の生地について
ここまで消防法に基づく消防設備をご紹介しましたが、テント倉庫の防火にはもう一つ重要な要素があります。それがテント倉庫に用いられている生地です。
テント倉庫の生地には防炎生地と不燃生地の2種類があります。
防炎生地
防炎生地は炎に当たっても簡単には着火せず、燃えても火元や炎から離せば、自己消火する素材です。着火しても周囲に燃え広がらないように加工されているため、延焼スピードを抑えられます。一般的に、火災発生時から消防車が到着するまで平均約8分かかるといわれているため、少しでも燃え広がるのを防ぐことで人命や保管物を守る効果が期待できます。
防炎生地は燃え広がりにくいので、少しでも逃げる時間・初期消火する時間を稼ぎいでくれるでしょう。雨よけ・日除けテント、シートカーテン、間仕切りシートなどは、防炎素材を使用するのが基本です。
不燃生地
不燃生地は建築基準法で不燃材料として国土交通大臣の認定を受けた生地です。具体的には、以下のような特性を持つ材料を指します。
- 加熱開始後から、20分間燃焼しない
- 防火上有害な変形、溶融、亀裂その他の損傷を生じない
- 避難上有害な煙又はガスを発生しない
不燃生地は塩ビフィルムにガラス繊維が練り込まれています。そのため、表面は燃えてもガラス繊維は燃え抜けず、飛び火による火の粉が反対側へ貫通して、建物内に侵入したり内部の可燃物に引火したりして燃え広がるのを防ぎます。一方で、ガラス繊維が入っていることで防炎シートほど柔軟性がなく、折れ・屈曲などに弱いのがデメリットです。また防炎シートに比べて、高価です。
テント倉庫の生地の使用条件
テント倉庫は建てる地域によって防炎生地と不燃生地を使い分ける必要があります。火災による被害を防ぐため、法律により防火地域、準防火地域、22条区域とエリアが定められていて、テント倉庫を建てるエリアがどの地域に該当するかによって対応する必要があるのです。
防火地域は駅前のような建物が密集する、火災の被害が大きくなりやすいエリアを指します。その周囲が準防火地域で、さらにその周りが22条区域です。テント倉庫を建てるエリアや保管するものによってテント生地の材質に規定があるため、テント倉庫を建てる前に必ず確認しましょう。
保管資材が不燃性の場合
テント倉庫で保管するものが不燃性であれば、防火地域、準防火地域、22条区域といったエリアにかかわらず、床面積で使用すべき生地が決まります。不燃性の保管資材として、陶器・磁石・ガラス類・金属類・鉄骨などが挙げられます。
- 床面積1,000㎡以下で延焼の恐れがある場合(部分)=不燃生地
- 床面積1,000㎡以下で延焼の恐れがない場合(部分)=防炎生地
保管資材が可燃性の場合
保管資材が紙・プラスチック・スチロール・木材・布製品といった可燃性のものの場合、エリアや床面積、部分によって生地を使い分ける必要があります。
防火地域の場合
防火地域の場合、いずれの床面積の条件においても、不燃生地を使用する必要があります。
- 床面積100㎡以下で延焼の恐れがない場合(部分)=不燃生地
- 床面積500~1,000㎡以下で延焼の恐れがない場合(部分)=不燃生地
準防火地域の場合
防火地域の場合、以下の床面積の条件で使用する生地が決まります。
- 床面積500㎡以下で延焼の恐れがない場合(部分)=屋根は不燃、外壁は防炎
- 床面積500~1,000㎡以下で延焼の恐れがない場合(部分)=不燃生地
22条区域の場合
防火地域の場合、以下のように定められています。
- 床面積1,000㎡以下で延焼の恐れがない場合=屋根は不燃、外壁は防炎
※内幕(燃え抜き防止膜)を併用すれば、屋根材に防炎を使用可能
延焼ラインにテント倉庫を設置する場合
延焼ラインや延焼の恐れがある部分へテント倉庫を設置する場合は、原則として他の建物から離す必要があります。延焼ラインとは隣地または道路で火災が発生したときに、火災が燃え移りやすい部分のことを指します。
以下に示す境界線・中心線から建築物の1階部分まで、3m離れた位置が延焼ラインとして決められています(2階建ての場合、2階部分は5mが延焼ラインになります)。
延焼ライン
- 隣地境界線
- 道路中心線
- 敷地内に二つ以上の建物があり、床面積の合計が500㎡を超える場合、外壁同士の中心線
延焼ラインに近ければ近いほど、万が一の際に燃え移る可能性が高まるため、上記のような境界線・中心線から離す必要があります。ただし隣り合う建物・テント倉庫どちらも、不燃物を収納しており、不燃材料で建てられていれば建築可能である場合もあります。テント倉庫を建てる前に行政やテント倉庫の施工業者に確認しましょう。
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テント倉庫は一般的な倉庫に比べて、簡単に短期間で建てられるのが魅力です。法律上は建物に含まれるため、消防法を遵守する必要があります。規模によって整えるべき消防設備が異なり、消火器や火災報知器、屋内消火栓といった設備が必要です。また保管する資材や建てるエリアによって、防炎生地と不燃生地を使い分けなくてはなりません。
テント倉庫を建てる際は、事前にエリアや保管物から、どのようなテント倉庫にすべきか考える必要があります。ですが、面積を計算したり設置条件を確認したりといった作業は簡単にできるものではありません。確実に防火対策を行うのであれば、専門業者に依頼することをおすすめします。
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